AFP・宅地建物取引士として、また東京都内で法人を経営しフィリピン・ハワイに実物不動産を保有する立場から言うと、ゴールデンビザのシミュレーションを「投資額だけ」で判断している人は痛い目を見ます。私が35歳時点の移住計画として実際に試算した7項目の費用内訳を、数字つきで包み隠さず公開します。
試算前提と移住計画の全体像|ゴールデンビザ シミュレーションの出発点
どの国のゴールデンビザを対象に試算したか
今回の試算は、ポルトガル・スペイン・ギリシャの3カ国を比較軸に設定しました。いずれもEU加盟国であり、永住権・市民権への道筋が比較的明確な国として、ヨーロッパ移住費用を検討する際に頻繁に名前が挙がります。
最終的に私が試算の主軸に置いたのはポルトガルです。理由は不動産投資ルートの透明性が高く、宅建士として物件精査のフレームワークを適用しやすかった点にあります。ただし2023年以降、ポルトガルは住宅用不動産をゴールデンビザの対象外としており、現在は商業用不動産・ファンド投資・寄付型の3ルートが主流です。試算はこの変更後の制度を前提にしています。
スペインは2024年に不動産ルートを廃止しており、ギリシャは25万ユーロの不動産ルートを維持しつつ一部地域では80万ユーロへ引き上げが進んでいます。投資ビザ比較として3カ国を並べた理由は、「同じゴールデンビザでも費用構造が国ごとに大きく異なる」という点を明確にしたかったからです。
35歳・独身・年収1,200万円という試算前提
試算の人物像は「35歳・独身・日本の法人から役員報酬1,200万円」です。私自身の属性に近い条件を設定しています。配偶者・扶養家族がいる場合は税負担の構造が変わるため、個別に税理士へ相談することを強く推奨します。
日本の居住者として出国する場合、国籍は日本のまま維持し、現地滞在日数を年間183日以上とすることで税務上の居住地移転を意図するパターンを想定しています。ただし、この日数管理と課税関係の判断は所得税法・租税条約の解釈が絡むため、税務判断については必ず税理士または所轄税務署に確認してください。
私がゴールデンビザ試算を始めた経緯|AFP・宅建士の実体験
フィリピン不動産購入時に痛感した「見えないコスト」
私がコスト試算の重要性を身をもって知ったのは、フィリピンで実物不動産を購入した時のことです。物件価格だけを見て「これなら買える」と判断しかけた瞬間、現地の弁護士費用・登記税・仲介手数料・固定資産税の年額が一気にのしかかってきました。物件価格の10〜15%相当が追加費用として発生したのです。
ゴールデンビザの試算でも同じ落とし穴があります。「最低投資額50万ユーロ」という数字だけを見て計画を立てると、実際に必要なキャッシュは1.2〜1.5倍になることがほとんどです。海外移住シミュレーションとして正確な数字を出すには、投資元本以外の7項目を細かく積み上げる必要があります。
試算表を作り直した3回の経験と税理士との連携
私は最初に試算表を自分で作り、その後2回修正しました。1回目の修正は現地の移民弁護士からフィードバックをもらった後、2回目は日本の税理士と打ち合わせを経た後です。
AFP資格を持つ私でも、税務面の判断は税理士に委ねています。特に「出国税(国外転出時課税)」の計算と、日本の法人から受け取る役員報酬の課税地判定は、FPの知識範囲を超えた税務判断が必要です。顧問税理士への相談費用は月額2〜3万円程度の顧問料が相場感ですが、海外移住案件に対応できる税理士は限られるため、専門性で選ぶべきです。費用の妥当性や税務の最終判断は、担当税理士と個別に詰めることを前提としてください。
投資要件7項目の費用比較|ゴールデンビザ費用の全貌
7項目の内訳と試算金額(ポルトガルを主軸に)
以下の7項目が、ゴールデンビザ試算における費用の全体像です。単位はユーロ表記を基本とし、1ユーロ=160円で換算しています。
- ①投資元本(適格ファンド経由):50万ユーロ(8,000万円)
- ②申請手数料・政府費用:約5,325ユーロ(約85万円)※ポルトガルの場合
- ③移民弁護士費用:3,000〜6,000ユーロ(約48〜96万円)
- ④ファンド管理手数料(年率1〜2%):年間5,000〜10,000ユーロ(約80〜160万円)
- ⑤現地居住費(年間):家賃・光熱費含め年間2万〜4万ユーロ(約320〜640万円)
- ⑥税務・会計費用(日葡両国対応):年間50万〜100万円相当
- ⑦出国税・国内税務精算費用:保有資産額に応じて個別算定(税理士要相談)
①の投資元本は「費用」ではなく「資産」ですが、5年間ロックアップされるキャッシュとして試算に含めます。流動性が失われる期間分の機会費用も本来は計上すべき点です。
ギリシャ・スペインとの投資ビザ比較
ギリシャは特定エリアなら不動産ルートで25万ユーロから取得可能で、投資元本の絶対額ではポルトガルより低く設定できます。ただし物件管理コスト・現地固定資産税・不動産取得税(約3.09%)が上乗せされ、5年間の総費用では差が縮まります。
スペインは2024年に不動産ルートを廃止したため、現状では事業投資・国債・株式ファンドへのルートに限定されています。ヨーロッパ移住費用として検討する場合、スペインは投資形態の選択肢が狭まっている点を認識してください。ゴールデンビザ2026最新動向|私が調べた6つの制度変更点
年間維持コストと税金の負担額試算
現地での年間生活費と社会保険の実態
ポルトガルのリスボン近郊で生活する場合、1LDK〜2LDKの家賃は月1,200〜2,000ユーロ(約19〜32万円)が現実的な水準です。光熱費・通信費・食費を加えると、月2,000〜3,500ユーロ(約32〜56万円)が年間生活費の基礎ラインとなります。
社会保険については、ポルトガルでは自営業者として登録した場合、社会保障拠出金が月収の21.4%相当で発生します。ただし日本の法人から役員報酬を受け取るだけの場合は、現地での就労登録をしないケースもあり、社会保険の取り扱いは滞在形態によって異なります。この点も税理士・社会保険労務士への個別確認が必要な領域です。個別の事情により負担額は大きく変わります。
出国税と日本側の税務コスト
日本で1億円以上の有価証券・投資信託・未決済のデリバティブを保有している場合、国外転出時に含み益に対して所得税・住民税が課されます(所得税法第60条の2)。これが「出国税」と呼ばれる制度です。
私の試算では、保有資産の構成次第でこの出国税が数百万円単位になる可能性があると試算しています。ただし、担保提供による納税猶予制度(5年間、延長で10年間)も存在するため、出国前に税理士と綿密に対策を練ることが重要です。「税金を確実に下げられる」とは断言できませんが、適正な事前準備により節税効果が見込まれるケースがあります。最終的な判断は必ず税理士へ。ゴールデンビザ実体験|35歳移住目標で比較した6カ国投資要件
5年間の総額シミュレーションとまとめ|判断基準を整理する
5年間総費用の試算まとめ(ポルトガル・ファンドルート)
- 投資元本(5年ロックアップ):8,000万円(50万ユーロ)
- 初期申請・弁護士・手数料:約200〜250万円
- ファンド管理手数料(5年間):約400〜800万円
- 現地生活費(5年間):約1,600〜3,200万円
- 日本・現地の税務・会計費用(5年間):約250〜500万円
- 出国税・国内精算:保有資産次第で個別算定
- その他渡航・雑費(5年間):約100〜200万円
投資元本を除いた実質負担の合計は、5年間で約2,550〜4,950万円の幅になります。年間換算で510〜990万円です。「ゴールデンビザは50万ユーロで取れる」という認識で計画を立てると、現実とのギャップに直面します。
ギリシャの25万ユーロ不動産ルートと比較した場合、投資元本は抑えられますが、物件維持・管理コストが継続的に発生するため、5年間の総費用差は思ったほど大きくならないケースもあります。海外移住シミュレーションは「初期費用」ではなく「総保有コスト」で判断することが重要です。
行動ステップと次に調べるべきこと
ゴールデンビザの取得を具体的に検討するなら、以下のステップで動くことを推奨します。まず自身の保有資産を棚卸しし、出国税が発生するかどうかを税理士に確認する。次に現地の移民弁護士へ初回相談(多くの場合有料)を行い、最新の申請要件・審査期間を確認する。そして日本側の法人や税務体制をどう整理するかを、海外案件に慣れた税理士と詰めていく流れです。
私自身、フィリピンとハワイの不動産購入時も、現地弁護士と日本側の専門家をつなぐ「ハブ」としての役割を自分で担いました。情報の非対称性が費用を膨らませる最大の要因です。この記事が、あなたのゴールデンビザ試算の出発点として機能すれば幸いです。個別の費用・税務の最終確認は、必ず専門家へ依頼してください。
より詳しいゴールデンビザの最新情報・申請サポートについては、以下からご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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