EB-5比較を本格的に始めたのは、私が35歳のときです。フィリピンとハワイに不動産を保有し、東京で法人を経営している私にとって、次のステップとしてアメリカ永住権の取得が視野に入ってきました。EB-5ビザは投資移民の中でも要件が厳しく、他国の投資ビザと並べて検討しないと判断を誤ります。この記事では私自身が6つの軸で比較検証した結果を、実務経験を交えて解説します。
EB-5の基本要件と投資額:まず数字を正確に把握する
80万ドルと105万ドル:TEAの有無で変わる投資下限額
EB-5ビザの投資下限額は、2022年のEB-5改革法(EB-5 Reform and Integrity Act)施行後に引き上げられました。ターゲット雇用地域(TEA)への投資であれば80万ドル、それ以外の地域は105万ドルが現在の下限です。以前の50万ドル・100万ドルから大幅に変更されたため、古い情報を参照している方は要注意です。
私がハワイの不動産を購入した際、現地の投資環境を調査する中でTEAの指定区域が年によって変わることを実感しました。TEA認定は州政府が行い、農村部または失業率が全国平均の1.5倍以上の地域が対象です。投資先を選ぶ前にTEA認定の有効期限を確認することが不可欠です。
10人の雇用創出義務:直接雇用とみなし雇用の違い
EB-5では、投資によって米国市民・永住権保有者の雇用を10人以上創出することが義務付けられています。直接投資の場合は直接雇用が必要ですが、リージョナルセンター(地域投資組合)経由の場合は間接・誘発雇用も「みなし雇用」としてカウントできます。
この「みなし雇用」の計算方式(IMPLAN等の経済モデル)は投資先のリージョナルセンターが提示しますが、審査上の認定が保証されているわけではありません。リージョナルセンター経由の申請が大半を占める理由はここにあります。雇用創出の証明が直接投資より柔軟であるため、個人が単独で事業を立ち上げるルートより選ばれやすい構造です。
他国投資ビザとの比較6軸:私が実際に検証したポイント
投資額・取得期間・永住権の確実性を軸に並べる
海外移住を検討する際、EB-5ビザだけを単独で評価するのは危険です。私はカナダ・ポルトガル・マルタ・UAE・オーストラリアの投資移民制度と並べて比較しました。以下の6軸で整理すると判断が明確になります。
- ①投資下限額:EB-5は80万〜105万ドル。カナダSUBはC$200,000の無利子融資。ポルトガルGVは不動産以外で28万ユーロ〜
- ②申請から永住権までの期間:EB-5は中国国籍以外で3〜5年、中国国籍は現在10年超の待機
- ③永住権の確実性:EB-5はI-526E承認後も国別割当により待機が発生する
- ④居住義務:EB-5グリーンカード取得後は原則として年間6ヶ月以上の米国滞在が必要
- ⑤税務上の影響:グリーンカード取得後は米国税法上の居住者として全世界所得課税対象となる
- ⑥投資の回収可能性:リージョナルセンター経由では投資の返還が保証されない案件も多い
特に⑤の税務影響は見落とされやすい点です。グリーンカード取得後に日本の不動産や法人からの収益がある場合、米国での申告義務が発生します。この点は必ず米国税理士(CPA)に相談することを強く推奨します。私が顧問税理士との打ち合わせで最初に確認したのもこの論点でした。
ポルトガルGVとUAE投資ビザ:現実的な代替案として検討した理由
EB-5比較の過程で、私が特に深く調べたのはポルトガルのゴールデンビザ(GV)とUAEの投資家ビザです。ポルトガルGVは2023年の法改正で不動産投資ルートが閉鎖されましたが、ファンド投資(50万ユーロ〜)や研究・文化支援(25万ユーロ〜)ルートは残っています。EU永住権・市民権への道筋という観点では、EB-5より取得後の自由度が高いと感じました。
一方、UAEのゴールデンビザは不動産200万ディルハム(約8,000万円)以上の保有で取得可能で、所得税ゼロという税制メリットがあります。ただし、UAE居住者になることで日本の居住者判定が変わり、出国税(国外転出時課税)の問題が生じる可能性があります。個別の資産状況により影響が大きく異なるため、税理士への相談が前提となります。
申請から永住権までの流れ:EB-5の具体的なステップ
I-526EからI-485またはDS-260:国内申請と領事処理の違い
EB-5の申請フローは大きく2つのルートに分かれます。すでに米国内に合法的に滞在している場合はI-485(身分変更)、米国外から申請する場合はDS-260(移民ビザ申請)を経由します。申請の流れを整理すると以下の通りです。
- 投資実行・資金調達証明の準備(6〜12ヶ月)
- I-526E(投資家請願書)をUSCISに提出
- USCISによる審査(現在の処理時間は30〜60ヶ月が目安、ただし変動あり)
- 国別ビザ枠の空き待ち(中国・インド国籍は特に長期化)
- 条件付きグリーンカード取得(CR-1、2年間有効)
- I-829(条件削除請願)提出・雇用創出証明
- 無条件永住権(IR-1)取得
I-829の段階で雇用創出10人の証明ができなければ永住権は取り消されます。リージョナルセンター経由の場合、プロジェクト自体が失敗するリスクもゼロではないため、投資先の実績と財務健全性の確認が不可欠です。カナダ移住とは実体験|35歳目標で調べた7つの基本要点
資金の出所証明(Source of Funds):日本人申請者が特に注意すべき点
EB-5申請で日本人が躓くポイントとして、資金の出所証明(Source of Funds)の厳格さが挙げられます。投資資金が合法的に取得されたことを証明するため、銀行口座の過去5年分の取引明細、不動産売却益の証明、法人からの配当・役員報酬の記録などを英訳付きで提出します。
私自身、フィリピンの不動産を購入した際に現地銀行口座への資金送金で出所証明を求められた経験があります。その時の資料整理の煩雑さを考えると、EB-5向けの資金証明はさらに高い精度が要求されると実感しています。移民弁護士と早期に連携し、資金調達の段階から証明書類を設計しておくことが重要です。
私が感じたEB-5の3つの壁:実体験から導いた課題
資金規模・待機期間・居住義務が重なる三重苦
AFP・宅地建物取引士として資産形成の相談に関わってきた私の視点から言うと、EB-5は「条件が揃った人には魅力的、揃っていない人には過酷」という制度です。私が35歳の時点で感じた3つの壁を具体的に挙げます。
第一の壁は資金規模です。80万ドルは日本円で約1億2,000万円(2025年レートで概算)です。法人経営者として複数の不動産を保有している私でも、この金額をリージョナルセンター案件に「返還保証なし」で投じることは慎重に考える必要があります。ハワイの不動産を購入した際も相応の資金計画を立てましたが、その経験があるからこそ「流動性の低い投資」へのリスク認識は高いです。
第二の壁は待機期間です。日本国籍の場合でも現状3〜5年のUSCIS審査期間がかかります。35歳で申請すれば永住権取得は40歳前後になる計算で、その間の生活設計の不確実性は無視できません。
第三の壁は居住義務と税務影響です。グリーンカード取得後は米国税法上の居住者として全世界所得を申告する義務が生じます。日本の法人からの役員報酬、フィリピン不動産の賃料収入、ハワイ物件の売却益——これらすべてが米国の申告対象になる可能性があります。出国税の問題も含め、この点は必ず日米両国の税理士に相談してください。私も顧問税理士との打ち合わせで、法人スキームの見直しが必要になる可能性を指摘されています。
リージョナルセンター選定:失敗しないための確認項目
EB-5改革法(2022年)でリージョナルセンターは再認定を受ける必要があり、USCIS登録済みのセンター数は以前より絞られています。選定時に確認すべき主な項目を整理します。
- 過去のI-829承認実績(雇用創出証明の通過率)
- プロジェクトの担保設定状況(劣後ローンか優先ローンか)
- 運営会社の財務状況と監査報告書の有無
- 投資資金の使途と資金管理(エスクロー口座の有無)
- プロジェクト完工リスクと遅延時の対応条項
海外金融機関での営業経験がある私でも、これらを自分だけで評価するのは困難です。EB-5専門の移民弁護士と、米国の証券弁護士(SEC登録案件かの確認も含む)のダブルチェックを前提に進めることを推奨します。カナダ移住比較実体験|35歳目標で調べた7つの判断軸と費用差
向いている人と不向きな人:35歳移住計画での結論
EB-5が有力な選択肢になるプロフィール
EB-5比較を通じて見えてきた「向いている人」のプロフィールは次の通りです。
- 流動資産(現預金・有価証券)で1億5,000万円以上を確保できる
- 子どもの米国教育・大学進学を長期的に見据えている
- 米国での事業展開や就労を5年以上のスパンで計画している
- E-2ビザ(条約投資家ビザ)では永住権に至らないルートに限界を感じている
- 中国・インド国籍以外で、3〜5年の待機を許容できる
特に子どもの教育目的でのアメリカ永住権取得は、EB-5の待機期間中もF-1(学生ビザ)や同伴ビザで渡航できるため、長期計画として合理性があります。
私の35歳時点での結論:EB-5より先に整えるべきことがある
正直に言うと、私は現時点でEB-5申請を即決しませんでした。理由は3つです。第一に、法人の組織再編と日本の税務処理を先に完結させる必要があること。第二に、フィリピン・ハワイ不動産の出口戦略を固める前に資金を固定化するリスクを避けたいこと。第三に、居住義務によって東京の法人経営に支障が出る可能性を排除できていないことです。
これはEB-5が劣っているという意味ではなく、「私の現状のポートフォリオ構成では優先順位が後になる」という個別判断です。海外移住・投資移民の選択肢は一つではありません。自分の資産状況・ライフプラン・税務上の立場を整理した上で、専門家と連携して判断することが不可欠です。
まとめ:EB-5比較で見えた選定基準と次のアクション
6つの検証軸で整理したEB-5の全体像
- 投資下限額:TEA地域で80万ドル、非TEAで105万ドル(2022年改革法以降)
- 雇用創出義務:米国市民・永住者10人以上(リージョナルセンター経由はみなし雇用可)
- 申請期間:日本国籍で3〜5年(USCIS審査は変動あり)
- 居住義務:グリーンカード取得後は年間6ヶ月以上の米国滞在が原則
- 税務影響:全世界所得課税対象となるため、日米税理士への事前相談が必須
- 投資回収リスク:リージョナルセンター案件は元本保証なし、選定精度が鍵
EB-5ビザは「アメリカ永住権への投資移民ルート」として確立されていますが、投資額の大きさ・待機期間・税務上の影響を総合的に評価した上で判断するべきです。他国の投資ビザ(ポルトガルGV・UAEゴールデンビザ・カナダSUB等)との比較検討を経てから申請を進めることを強く推奨します。
次のステップ:まず情報収集から始める
EB-5を含む投資ビザの比較検討は、情報の鮮度と専門性が判断の精度を左右します。私自身、海外金融機関での営業経験と複数国での不動産保有経験を持ちながらも、移民弁護士・税理士・現地エージェントとのネットワークなしには判断できない領域が多いと実感しています。
まずは信頼できる情報源と専門家への相談窓口を確保することが第一歩です。海外移住・アメリカ永住権取得に向けた具体的な情報収集の出発点として、以下のリンクから詳細を確認してみてください。個別の事情により最適なルートは異なりますので、最終的な判断は移民弁護士・税理士などの専門家に相談することを強く推奨します。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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