海外移住の税金シミュレーションを自分でやってみると、想定外の項目が次々と出てきます。私がAFP(日本FP協会認定)・宅地建物取引士として、また東京都内で法人を経営しフィリピン・ハワイに実物不動産を保有する立場から、35歳での移住を目標に据えて実際に試算した7つの税負担項目と、その国別比較の結果をこの記事で公開します。個別の事情により数値は異なりますが、試算の骨格として参考にしてください。
海外移住の税金試算:前提条件と7つのチェック項目
試算の前提:年収・資産構成・移住タイミング
税金試算を始める前に、前提条件を揃えることが肝心です。私が設定したモデルケースは以下のとおりです。年齢は35歳、日本法人からの役員報酬が年間1,200万円、金融資産(株式・投資信託)が約3,000万円、不動産は東京都内に区分マンション1室(評価額約2,500万円)を保有している状態です。
移住タイミングは12月末を想定しました。住民税の課税基準日(1月1日時点の住所地)を意識した選択です。移住先の候補はマレーシア・フィリピン・ドバイ(UAE)の3カ国に絞り、それぞれで税負担総額を比較しました。
なお、以下の試算はFP的な概算であり、税務判断の根拠にはなりません。確定申告・税務処理は必ず担当税理士または所轄税務署へご確認ください。
7項目のチェックリスト:試算漏れを防ぐ構造
移住前後で発生する税負担は、大きく7項目に整理できます。①出国税(国外転出時課税)、②住民税の残余負担、③日本での所得税(非居住者課税)、④現地所得税、⑤社会保険料の取扱い、⑥法人関連の追加課税、⑦相続・贈与への影響です。
多くの方が見落とすのは②と⑥です。住民税は翌年の6月まで前年分が課税され続け、法人を日本に残したまま移住すると法人税・消費税の申告義務も継続します。海外移住費用の試算は「移住先のコスト」だけでなく、日本側に残る義務も含めて考える必要があります。
出国税と住民税:私が実際に数字を出してぶつかった壁
出国税の試算:3,000万円の金融資産でいくら発生するか
出国税(国外転出時課税)は、所得税法第137条の2に基づき、1億円以上の有価証券等を保有して出国する場合に、含み益に対して所得税・復興特別所得税が課税される制度です。私のモデルケースでは金融資産が約3,000万円のため、原則として出国税の課税対象外となります。
ただし、税理士との打ち合わせで指摘を受けたのは「移住直前の増資・資産移転のタイミング」でした。出国直前に資産が1億円を超えると課税対象になるため、株式の売却益再投資などには注意が必要です。資産3,000万円でも、未公開株を保有している場合は評価額次第で課税対象に引っかかるケースがあります。この点は税理士に個別確認することを強く推奨します。
住民税の「二重取り」に見えるメカニズムを整理する
住民税で多くの方が驚くのは、1月1日時点に日本に住所があれば、その年の住民税が翌年6月まで課税される点です。たとえば2025年12月末に出国した場合、2024年(令和6年)の所得に対する住民税(2025年6月〜2026年5月分)は日本に帰ってくる形で課税されます。
私のモデルケースで試算すると、年収1,200万円・東京都在住の場合、住民税の年額は概算で130〜140万円程度です(所得控除・社会保険料控除後の課税所得ベース。実際の金額は個別の控除状況により異なります)。出国後も1年以上この負担が続く可能性があるため、「移住したら即ゼロになる」という誤解は危険です。詳細な税額計算は税理士または市区町村の税務窓口に確認してください。
現地所得税と社会保険料:国別比較で見えた差額
マレーシア・フィリピン・ドバイの所得税率比較
現地所得税は移住先を選ぶうえで重要な軸の一つです。私が実際に滞在・視察した3カ国について、税率の概観を整理します。
マレーシアは居住者への課税で最高税率30%(2024年時点)ですが、MM2Hビザ保有者は海外源泉の所得は非課税とされています(制度改正の可能性があるため最新情報を確認のこと)。フィリピンは居住外国人(RA)に対して国内源泉所得のみ課税、最高税率35%です。私がフィリピンに不動産を保有して感じたのは、税制よりも「徴収の実務体制」が課税負担感に直結するという点でした。ドバイ(UAE)は個人所得税がゼロです。ただし法人課税(2023年より法人税9%が導入)と消費税(VAT5%)は存在します。
単純な税率だけで国を選ぶのは危険です。租税条約の有無、ビザの取得難易度、実際の生活コストとのトレードオフを国別比較で総合的に判断することが重要です。出国税2026実体験|35歳移住計画で調べた7つの課税要件と対策軸
社会保険料:移住後の「自己負担」設計を忘れずに
日本の社会保険(健康保険・厚生年金)は、日本法人の役員を退任・出国すると基本的に脱退となります。ただし国民年金は任意継続加入が可能で、将来の受給権を維持するために継続を選択する方も多くいます。
私のモデルケースで試算すると、役員報酬1,200万円の場合の社会保険料(会社・個人合計)は年間約220〜230万円程度です(標準報酬月額・業種・加入保険組合により異なります)。移住後これがゼロになる一方、現地での民間医療保険への加入が不可欠となり、年間30〜80万円程度のコストが新たに発生します(保障内容・年齢・渡航先により大きく異なります)。「社会保険料がなくなる=丸ごと得」ではなく、代替コストとのネットで考える視点が必要です。
法人保有時の追加論点:日本法人を残したまま移住する場合
役員の非居住者化と法人税・消費税への影響
私が東京都内で法人を経営しているため、この論点は実際に税理士と深く議論した部分です。代表取締役が非居住者になった場合、法人税法上の内国法人の地位は維持されますが、役員報酬の支払いに関して源泉徴収の取扱いが変わります。非居住者への役員報酬は、租税条約の適用がない場合、所得税法上20.42%の源泉徴収が必要です。
また、消費税法上の「国内取引」判定や、インボイス制度(適格請求書等保存方式)との関係も整理が必要です。私は法人の決算前打ち合わせで顧問税理士から「代表の住所が変わるタイミングで手続きが複数発生する」と指摘を受け、移住スケジュールを法人の決算期に合わせて再設計しました。法人を残したまま移住する場合は、顧問税理士との事前確認が必須です。
海外不動産保有と日本の確定申告義務
私はフィリピンとハワイに実物不動産を保有しています。非居住者になった後も、日本法人からの収益や日本国内の不動産所得がある場合は、日本での確定申告義務が継続します。
海外不動産については、現地での賃料収入が発生した場合、現地の税法と日本の税法双方が適用され、租税条約による二重課税の調整が必要になります。ハワイの不動産賃貸収入には米国での申告義務(Form 1040-NR等)が生じるケースもあり、現地の税務専門家との連携は欠かせません。海外資産の申告漏れは国税庁の「国外財産調書」制度の対象にもなるため、適正処理の確認を税理士に依頼することを強く推奨します。国外転出時課税2026|知らないと損する7つの真実
7項目の試算総額と国別比較:まとめとCTA
モデルケースの試算結果サマリー
- ①出国税:資産3,000万円のモデルでは原則課税なし(内容・構成により異なる)
- ②住民税の残余負担:移住後最大1年以上、年額換算130〜140万円程度が継続
- ③日本での所得税(非居住者):国内源泉所得がある場合は課税継続、源泉徴収20.42%が目安
- ④現地所得税:ドバイ0円、マレーシア(海外収入非課税)0円、フィリピン(国内収入のみ課税)は収入状況次第
- ⑤社会保険料の代替コスト:民間保険で年間30〜80万円程度が新規発生
- ⑥法人関連:役員非居住者化により源泉徴収率が変化、顧問税理士との事前設計が必要
- ⑦相続・贈与への影響:移住後10年以内は日本の相続税が適用される可能性あり(相続税法改正の経緯を確認)
3カ国の総税負担(日本側コスト+現地税)を比較すると、ドバイが最もシンプルですが、ビザ取得コストや生活費が高く、トータルの海外移住費用は必ずしも低くありません。マレーシアはコスト・ビザ取得難易度・税負担のバランスが取りやすい選択肢です。フィリピンは不動産保有との親和性があり、私自身も現地物件取得を経験していますが、税務実務の透明性という点では注意が必要だと感じています。いずれの国も個別の事情により大きく結果が変わるため、必ず税理士・ファイナンシャルプランナーに相談したうえで最終判断してください。
次のアクション:税理士選びと情報収集の両輪で動く
海外移住の税金シミュレーションは、一度やって終わりではありません。制度は毎年改正されており、2023年の法人税導入(UAE)、MM2Hの条件変更(マレーシア)、日本の相続税法改正など、直近数年だけでも大きな変化がありました。私自身、顧問税理士との定期的な打ち合わせで試算を更新し続けています。
まず取り組むべきは、自分の資産・収入構成を棚卸しして「どの項目が課税対象になるか」を整理すること、そして海外移住に精通した税理士を探して相談することです。FPとしての私の役割は、税理士に相談する前の「論点整理」と「コスト全体像の把握」です。税務代理・税務相談は税理士の専門領域であり、個別の税額計算や申告手続きは必ず税理士に依頼してください。
移住先選び・ビザ取得・現地生活の情報収集をスムーズに進めたい方は、以下のサービスも活用してみてください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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