リタイアメントビザを35歳で取得できるのか——そう調べ始めたのは、フィリピンに実物不動産を購入した直後のことです。私はAFP(日本FP協会認定)・宅地建物取引士として東京で法人を経営しながら、フィリピンとハワイに不動産を保有しています。海外移住ビザの条件は国ごとに大きく異なり、「とりあえずフィリピンで」という判断が後から高くつくケースを何度も見てきました。この記事では7カ国のリタイアメントビザ比較を、費用・条件・生活コストの軸で整理します。
リタイアメントビザとは何か:基本と落とし穴
「退職者ビザ」と「富裕層移住ビザ」は別物と理解する
リタイアメントビザは、定年退職者向けの長期滞在許可と思われがちですが、実態は「一定の資産・収入を証明できる外国人に長期滞在資格を与える制度」です。年齢要件が35歳からと低い国(フィリピンのSRRV、マレーシアのMM2H旧制度など)も存在し、アーリーリタイア志向の30〜40代が注目しています。
ただし、この「退職者ビザ」という名称がミスリードを生みます。就労禁止・現地収入禁止が条件となる国が多く、法人経営者の私のように「日本の法人から役員報酬を受け取りながら現地に滞在する」形が認められるかは国ごとに判断が異なります。移住前に現地の入国管理局か専門の移民弁護士に確認することが不可欠です。
ビザ取得後に変わること・変わらないこと
海外移住ビザを取得しても、日本の税務上の居住者判定が自動的に変わるわけではありません。所得税法上の「非居住者」となるためには、生活の本拠が海外に移ったことを実態で示す必要があります。ビザ取得はその入口に過ぎず、税務的な判断は税理士への相談が前提です。
一方で変わることもあります。現地の医療費自己負担、銀行口座の種類、不動産購入権など、ビザの種類によって受けられるサービスが大きく変わります。リタイアメントビザ保有者専用の優遇(病院での優先対応、外国人土地取得の緩和等)が制度化されている国もあるため、単なる滞在許可以上の意味を持ちます。
私が陥った3つの誤算:海外不動産オーナーとしての実体験
フィリピン不動産購入後に気づいた「ビザの壁」
実際にフィリピンに不動産を購入した時の話から始めます。購入手続きは現地パートナーと進め、所有権移転も完了しました。ところが、長期滞在しようとした際にSRRV(特別居住退職者ビザ)の預託金条件が「35歳以上は20,000米ドル」であることを改めて確認し、不動産の評価額を預託金に充当できないことを知りました。不動産購入とビザ取得は別のプロセスです。この点を混同しているケースは多く、私自身も最初は「物件があればビザが楽になる」と誤解していました。
SRRVには複数の種類(Classic、Smile、Human Touch等)があり、それぞれ預託金額や医療条件が異なります。2024年時点での改定内容も踏まえると、エージェント情報だけを信じず、フィリピン退職庁(PRA)の公式情報を直接確認することをすすめます。
資産要件を「クリアできる数字」で見ていた甘さ
2つ目の誤算は、預託金をコストとして正確に評価していなかった点です。たとえばマレーシアのMM2Hは2021年の大幅改定後、月次オフショア収入50,000リンギット(約160万円)、預託金150万リンギット(約4,800万円)という条件になりました。2023年以降は一部緩和の動きがありましたが、以前の「気軽に取れる移住ビザ」というイメージとは全く異なります。
資産要件をクリアできるかどうかだけでなく、「その資産を現地口座に預けることで生じる機会コスト」を試算すべきです。AFP資格を持つ私の立場から見ると、預託金は運用できない拘束資産であり、同額を日本の金融商品で運用した場合の想定リターンと比較した上で判断すべきです。個別の試算は、担当するFPや税理士に相談することをすすめます。
7カ国のリタイアメントビザ条件比較:預託金と資産要件の実額
アジア5カ国の預託金・年齢・収入要件一覧
アジア移住の候補として挙げられるフィリピン・マレーシア・タイ・インドネシア・カンボジアの5カ国を整理します。フィリピンSRRVは35歳以上で預託金20,000米ドル(約300万円)、年齢・健康条件あり。マレーシアMM2Hは2023年改定版で月収要件40,000リンギット超・預託金100万リンギット以上が維持されています(2025年時点の公式情報を要確認)。タイのタイランド・エリートビザは年会費制(5年・10年・20年プラン)で預託金型ではなく、50万〜200万バーツ(約200〜800万円)の一括払いという形式です。
インドネシアは2023年に「第二の家ビザ(Second Home Visa)」を新設し、5年・10年の長期滞在を2億ルピア(約180万円)の預託金で取得可能にしました。カンボジアはコンドミニアム購入(10万米ドル以上)と連動した長期ビザがあり、取得ハードルは比較的低い水準です。ただしカンボジアは制度変更が頻繁なため、直近情報の確認が特に重要です。
ポルトガル・ドバイ:欧州・中東の選択肢と費用感
アジア圏以外では、ポルトガルのNHR(非常居住者)制度と組み合わせたD7ビザ(受動的収入ビザ)が注目されています。月760ユーロ以上の受動的収入(年金・不動産収入・配当等)が条件で、預託金型ではありません。ただし2024年以降、NHR制度の廃止と新制度「IFICI(革新的経済活動)」への移行が進んでおり、税優遇の内容が変わっています。ポルトガル移住を検討する場合は現地の税務・移民専門家への確認が欠かせません。アジア格安リタイアビザ徹底比較|実体験から導く結論
ドバイ(UAE)はリタイアメントビザ(退職者ビザ)として月収20,000ディルハム(約80万円)・不動産100万ディルハム以上の保有・100万ディルハム以上の預金、のいずれかを満たすと5年ビザが取得可能です。個人所得税がゼロである点は、日本の税務上の非居住者要件を満たした場合に大きなメリットになりますが、この判断は必ず税理士に確認してください。
月々の生活コスト試算と医療・税務の論点
国別の生活費試算:単身・夫婦2人の現実的な数字
生活コストはリタイアメントビザ費用と同じくらい重要な判断軸です。フィリピン(マニラ近郊または地方)では、単身で月15〜25万円程度が現実的な生活費の目安です。外国人向けコンドミニアムの家賃(マカティ・BGC周辺)は月7〜15万円程度が相場で、食費・交通費を加えても東京の6〜7割程度に収まります。実際に私が現地視察した際の感覚とも大きくずれていません。
マレーシア(クアラルンプール)は単身で月18〜30万円、タイ(チェンマイ)は月12〜20万円が目安です。物価上昇が続いており、3〜5年前の情報は参考程度にとどめてください。ドバイは物価が高く、単身でも月40〜60万円以上を見ておく必要があります。生活の質を下げずに住むなら、これ以上かかるケースも少なくありません。
医療保険と税務:見落としやすい2大コスト
リタイアメントビザ保有者の医療保険は、現地の社会保険に加入できないケースが多いため、民間の国際医療保険が実質必須です。年間保険料は年齢・補償内容によりますが、30〜40代で年30〜80万円程度が相場感です。フィリピンのSRRVはPRA登録病院での優待がありますが、高額治療時の実費負担リスクは保険で備えるべきです。
税務面では、日本の所得税法上の「非居住者」となるかどうかが重要な論点です。役員報酬を日本法人から受け取りながら海外に滞在する場合、居住形態・滞在日数・生活の本拠など複数の要素で判断されます。「海外に住めば自動的に税負担が下がる」という理解は正確ではなく、節税効果が見込まれるケースもある一方で、個別の事情により結果は大きく異なります。最終判断は必ず税理士または所轄税務署に確認してください。ジョージア移住起業ビザ実体験|私が35歳目標で調べた6つの要点
35歳から逆算する準備手順:まとめとCTA
7カ国比較から見えた判断軸の整理
- 預託金の拘束コスト:同額を運用した場合の機会損失と比較して決断する
- ビザの安定性:制度改定リスク(MM2Hの大幅改定はその典型)を事前に調べる
- 就労・収入規制:日本法人からの役員報酬受け取りが現地法上問題ないか確認する
- 医療インフラ:長期滞在時の医療水準と国際保険の年間コストを生活費に含める
- 税務上の居住地判定:渡航前に税理士と非居住者要件を確認しておく
- 家族帯同・更新要件:配偶者・子どものビザ種別と更新手続きの手間を把握する
- 出口戦略:ビザ失効・制度廃止時の帰国・第三国移転の選択肢を想定する
私が今後の移住計画で使っているサービス
35歳移住を現実的に検討するなら、情報収集の段階から信頼できるサービスを使うことが時間的コストの節約につながります。私自身、海外口座開設・現地不動産購入の経験から、現地エージェントや移民弁護士の質が手続きの成否を左右することを実感しています。ビザ条件の最新情報、預託金管理、現地銀行口座の開設サポートなどをまとめて比較できるサービスは、移住初期の検討段階で活用する価値があります。個別の事情により適したサービスは異なりますので、複数の選択肢を比較した上で判断してください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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