EB-5のやり方を本気で調べ始めたのは、私が35歳を目前にしたタイミングでした。フィリピンとハワイに実物不動産を保有しながら「次のステップはアメリカへの投資永住権」と考えた時、情報の複雑さに正直面食らいました。この記事では、AFP・宅地建物取引士として海外資産管理に携わってきた立場から、EB-5ビザ申請の7ステップを実体験ベースで整理します。
EB-5の基本と投資額条件──2026年時点の制度全体像
EB-5とは何か:投資永住権の仕組みを整理する
EB-5(Employment-Based Fifth Preference)は、米国への直接投資を通じて永住権(グリーンカード)を取得できる米国移住ビザプログラムです。1990年に創設され、2022年のEB-5改革・整合法(EB-5 Reform and Integrity Act)によって制度が大幅に見直されました。2026年現在、大枠の仕組みは以下の通りです。
投資家は米国内の商業事業に資金を投じ、米国市民権・永住権を持たない労働者を10人以上雇用することが求められます。これがEB-5ビザ申請の根本条件であり、単なる金融商品への投資とは性格が異なります。
申請ルートは大きく2種類に分かれます。①自分で事業を立ち上げる「直接投資」と、②USCIS(米国市民権・移民局)が認定した地域センター(Regional Center)を経由する「地域センター投資」です。実務上、後者を選ぶ申請者が圧倒的に多い状況です。
投資額の最低ライン:TEA地区か否かで変わる80万ドル・105万ドル
EB-5手続きを進める上で最初に確認すべきなのが投資額の条件です。2022年の法改正後、最低投資額は次の2段階に整理されました。
- TEA(対象雇用地区)内への投資:80万ドル(約1.2億円)
- TEA外への投資:105万ドル(約1.6億円)
TEAとは、農村地域または失業率が全国平均の1.5倍以上の地区を指します。都市部の大型開発プロジェクトでもTEA認定を受けているケースが多く、地域センター経由の案件ではTEA適用の可否が最初の選定基準になります。
私がハワイの不動産購入時に感じたことと同じで、「現地の地域指定がどう変わるか」は行政の裁量次第です。TEA認定が取り消されるリスクも念頭に置いておく必要があります。投資先プロジェクトのTEA認定状況は弁護士に確認することを強くすすめます。
私がEB-5を本気で調べた実体験──資金証明準備の現実
35歳・法人オーナーとして直面した「資金の適法性証明」の壁
私が実際にEB-5のやり方を掘り下げたのは、東京の法人経営と海外不動産保有を並行しながら「次の移住先」を検討し始めた時期です。フィリピンとハワイへの不動産購入経験から、海外送金・外国口座開設の実務はある程度慣れていました。しかしEB-5では、投資資金の「出所(ソース・オブ・ファンズ)証明」の厳格さが別次元でした。
USCISが求めるのは「投資に使う80万ドルがどのように合法的に得られたか」を書類で証明することです。法人からの役員報酬、不動産売却益、株式譲渡益、相続・贈与など、資金源ごとに対応書類が変わります。私の場合、法人経営による収入と不動産売却益が絡み合う形になるため、税務申告書・法人決算書・不動産売買契約書・登記簿謄本を5年分以上さかのぼって準備する必要があることがわかりました。
「これは一人でできる作業ではない」と実感したのが正直なところです。EB-5に精通した米国移民弁護士と、日本側の税理士・司法書士が連携しなければ書類の整合性を取れません。税務書類の解釈については税理士への依頼が前提であり、私も顧問税理士に相談しながら整理を進めました。
海外口座・外国送金の実務経験が活きた場面と限界
海外金融機関での営業経験と、フィリピン・ハワイへの実物不動産購入で培った送金実務の知識は、EB-5の資金移動フェーズでも一定程度役に立ちました。具体的には、外国為替取引の記録保持、送金先口座の安全性確認、為替変動リスクのヘッジ方法などです。
ただし、EB-5では「資金のトレーサビリティ」が問われるため、送金記録が途切れると申請に致命的な影響が出ます。私が海外口座開設時に経験した「書類の些細な不備が数週間の遅延を招く」という感覚は、EB-5でも同じかそれ以上に厳しく適用されます。
送金タイミングと為替レートの関係も見逃せません。80万ドルを円で換算すると、1ドル=150円なら1億2,000万円、1ドル=160円なら1億2,800万円です。為替変動だけで800万円近く必要額が変わります。FP(AFP)としての視点から言えば、為替ヘッジの検討は資金計画の初期段階から行うべきです。
7ステップ申請フロー解説──EB-5手続きの全体像
ステップ1〜4:プロジェクト選定からI-526E提出まで
EB-5の申請フローは複雑に見えますが、段階を追えば整理できます。以下の7ステップが標準的な流れです。
ステップ1:プロジェクト(地域センター)の選定
USCISが認定した地域センターの中から投資案件を選びます。プロジェクトの財務健全性、雇用創出計画、TEA認定状況、過去の実績を精査します。デューデリジェンス(事前調査)には最低でも2〜3ヶ月かけるべきです。
ステップ2:米国移民弁護士との契約
EB-5手続きは書類の量・英語対応・USCISとのやり取りを含むため、米国移民法に精通した弁護士が不可欠です。弁護士費用は案件によって異なりますが、申請全体を通じて200万〜400万円程度を見込む必要があります(個別案件により大きく異なります)。
ステップ3:資金の準備・ソース・オブ・ファンズ書類の整備
前述の通り、資金の合法性を証明する書類を日米双方で整えます。税務申告書は日本の確定申告書・法人申告書ともに英訳が必要です。翻訳費用と認証費用も予算に組み込みます。
ステップ4:I-526E(投資家請願書)の提出
2022年の法改正でI-526はI-526Eに変わりました。地域センター経由の申請で使用するフォームです。USCIS審査期間は2026年時点で18〜36ヶ月が目安とされていますが、ケースバイケースで変動します。
ステップ5〜7:領事処理・条件付き永住権・条件解除まで
ステップ5:領事処理またはステータス調整(I-485)
I-526Eが承認されると、米国外にいる申請者は在外米国大使館・領事館で移民ビザの発給を受けます(DS-260の提出)。すでに米国内にいる場合はI-485でステータス調整が可能です。この段階で身元調査・健康診断が行われます。
ステップ6:条件付き永住権(2年間)の取得
入国後、条件付き永住権(CPR:Conditional Permanent Residence)が付与されます。有効期間は2年間で、この間に投資の継続と10人雇用の維持が求められます。
ステップ7:I-829(条件解除請願書)の提出と恒久的永住権の取得
条件付き永住権の有効期限90日前からI-829を提出できます。雇用創出の実績・投資の継続を証明し、承認されると恒久的な米国永住権(グリーンカード)を取得できます。I-829の審査には24〜36ヶ月程度を要するケースも少なくありません。
申請全体のタイムラインは、順調に進んでも5〜8年かかると見ておくのが現実的です。カナダ移住とは実体験|35歳目標で調べた7つの基本要点
必要書類と弁護士選び──EB-5ビザ申請の精度を左右するポイント
I-526E提出に必要な主要書類リスト
EB-5ビザ申請で最初の山場となるI-526E提出には、相当量の書類が必要です。主なものを整理します。
- パスポートのコピー(全ページ)
- 出生証明書(英訳・認証付き)
- 過去5年分の日本の確定申告書・法人申告書(英訳)
- 銀行残高証明書・取引明細(投資資金相当額)
- 不動産売買契約書・登記事項証明書(資金源の証明)
- 地域センターへの投資契約書・エスクロー証明
- 雇用証明書・役員就任証明書(法人経営者の場合)
- 犯罪経歴証明書(警察証明)
これらすべてに英訳と公証が必要なケースがあり、書類作成だけで数ヶ月を要します。私が顧問税理士に相談した際も「5年分の法人決算書と申告書を英語対応で整えるには、できるだけ早い段階から準備を始めてほしい」と言われました。税務書類の解釈や翻訳内容の確認は必ず税理士に依頼することをすすめます。
米国移民弁護士の選び方と費用感
EB-5手続きの質は、弁護士選びで大きく変わります。選定時に確認すべき点は以下です。
まず「EB-5専門の実績件数」を必ず確認します。米国移民法全般を扱う弁護士より、EB-5案件を年間10件以上手掛けている専門弁護士の方が実務対応力が高い傾向にあります。
次に「日本語対応の有無」です。書類の英訳・コミュニケーションのロスを防ぐため、日本語対応スタッフがいる事務所、または日本人コーディネーターを持つ事務所が現実的です。
費用は申請フェーズ全体(I-526E〜I-829)を通じると、弁護士費用だけで200万〜400万円程度が相場感として語られます。ただし、これは個別ケースにより異なるため、複数事務所から見積もりを取ることをすすめます。弁護士費用に加え、地域センターの管理手数料(年間3〜5万ドル程度が多い)も別途発生します。
私が海外不動産購入時に学んだことの一つが「現地の専門家への報酬をケチると、後でより大きなコストが発生する」という現実です。EB-5でも同じ原則が当てはまります。カナダ移住比較実体験|35歳目標で調べた7つの判断軸と費用差
私が調べた失敗事例3つ──EB-5で後悔しないために知っておくべきこと
失敗事例①〜②:地域センター選びと資金証明のミス
EB-5の申請過程で発生する失敗には、共通したパターンがあります。私が弁護士や先行事例のリサーチで把握した内容を整理します。
失敗事例①:地域センターの事業破綻による投資資金の毀損
地域センターのプロジェクトが経営難に陥り、投資資金が返還されないケースが過去に複数報告されています。USCISの認定を受けていることと「投資リターンが保証される」ことは別の話です。プロジェクトの財務諸表・担保設定・完成保証の有無を事前に精査しなければ、80万ドルを失うリスクがあります。FP(AFP)の視点から言えば、元本保証が明示されていない投資はリスク商品として扱うべきです。
失敗事例②:ソース・オブ・ファンズ書類の不備によるRFE(追加証拠要求)
申請後にUSCISから「資金の出所が不明確」としてRFE(Request for Evidence)が来るケースは珍しくありません。RFEへの対応が不十分だと申請が却下されます。特に法人経営者の場合、個人口座と法人口座の資金移動が複雑になりやすく、弁護士・税理士と事前にシミュレーションしておく必要があります。
失敗事例③:ビザカットオフ日の見落としによる長期待機
失敗事例③:チャイニーズ優先日の影響を甘く見た事例
EB-5には国別の年間発給数上限があります。中国・インド・ベトナムなど出願者が多い国籍の申請者は「ビザカットオフ日(Priority Date)」の影響で、I-526E承認後も数年〜10年以上待機が発生するケースがあります。
日本国籍の場合は現時点でカットオフの影響が比較的小さい状況ですが、今後の申請者数増加によって状況が変わる可能性はゼロではありません。最新の「Visa Bulletin(ビザ速報)」を毎月確認し、弁護士と申請タイミングを議論することが必要です。
また、米国税務上の扱いも見落とせません。グリーンカードを取得すると米国の「税務上の居住者」として扱われ、全世界所得が米国の課税対象となります。日本側の課税関係とも絡むため、米国・日本双方の税理士に事前相談することが前提です。最終的な税務判断は必ず専門の税理士へ確認してください。個別の事情により税務上の取り扱いは大きく異なります。
まとめ:EB-5やり方の要点と次のアクション
7ステップと3つの注意点:チェックリストとして使う
- 【投資額】TEA地区内なら80万ドル、TEA外なら105万ドルが最低ライン。為替変動を考慮した資金計画が必要
- 【プロジェクト選定】USCISの認定≠投資安全性。財務・担保・雇用計画を独自に精査する
- 【資金証明】法人経営者・不動産オーナーは資金のトレーサビリティ確保が特に重要。税理士・弁護士と早期連携が必須
- 【申請フロー】I-526E提出→領事処理→条件付き永住権→I-829提出、全体で5〜8年のタイムラインを想定する
- 【弁護士選び】EB-5専門実績・日本語対応・費用内訳の透明性を基準に複数事務所を比較する
- 【税務対応】グリーンカード取得後は日米双方の税務上の居住者ステータスが変わる。日米両方の税理士への事前相談が前提(個別の事情により異なります)
- 【Visa Bulletin】国別優先日を毎月確認し、申請タイミングを弁護士と調整する
アメリカ投資移住の第一歩:まず情報収集から始める
EB-5のやり方を理解した上で実感するのは、「情報収集と専門家選びが申請の半分以上を決める」ということです。私自身、フィリピン・ハワイへの不動産購入でも「最初に正しい専門家に当たれたかどうか」で結果が変わった経験があります。
アメリカ投資移住は総コストが1.5億円規模になるプロジェクトです。弁護士費用・地域センター管理手数料・書類準備費用・為替コストを含めた総合的な資金計画を、FP(AFP)的な視点で最初に立てることを強くすすめます。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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