EB-5シミュレーション実体験|35歳移住で試算した6項目投資収支

EB-5シミュレーションを「自分ごと」として試算した経験がある人は、思いのほか少ないと感じます。私はAFP・宅地建物取引士として、フィリピンとハワイの不動産を実際に保有する立場から、35歳での米国移住を想定したEB-5ビザの6項目投資収支シミュレーションを行いました。投資移民という制度は数字で語らなければ判断できません。この記事でその全貌を公開します。

EB-5投資額の内訳試算|80万ドルの「実質コスト」を分解する

政府が定める最低投資額と現実の調達コスト

2022年の法改正(EB-5改革・誠実性法)以降、EB-5ビザの最低投資額は対象エリアによって異なります。TEA(目標雇用地域)であれば80万ドル、非TEAであれば105万ドルが現行の基準です。

私が試算の前提に置いたのは、TEA適用の80万ドル(約1億2,000万円、1ドル=150円換算)です。ただし、この80万ドルはあくまで「投資元本」であり、実際に手元から出ていくお金はこれだけではありません。

まず管理手数料(Administrative Fee)が別途発生します。リージョナルセンター案件では5万〜7万ドルが相場感として語られており、私が収集した複数の案件資料でも5万ドル前後が標準的でした。つまり投資元本+管理手数料の合計で、最低でも85万ドル前後を調達する必要があります。

さらに注意が必要なのが為替調達コストです。日本円から米ドルへ換える際の為替スプレッドと両替コストは、金額が大きいほど見逃せません。銀行窓口での換算と海外送金手数料を合算すると、1億2,000万円規模の送金では20〜30万円程度のコストが現実的に発生します。

「返還される」前提が崩れた時の損失試算

EB-5の投資元本は、プロジェクト完了後に返還されるケースがあります。ただし「返還保証」ではなく「返還される可能性がある」という性格のものです。私は不動産実務の経験からリスク評価に慣れていますが、それでもこの点は重く見ています。

仮に元本の全額が戻らないケースを想定すると、80万ドルの毀損は1億2,000万円の損失です。部分返還(50%)でも6,000万円。これを35歳から10年の機会費用と比較するなら、同じ資金をS&P500インデックスに年率7%で運用した場合の10年後の試算は約1億6,600万円(税引前)になります。

投資移民として米国永住権を取得する価値が、その機会損失に見合うかどうか。この問いこそがEB-5シミュレーションの核心だと私は考えています。個別の事情により判断は大きく異なりますので、最終的な投資判断は財務・法律の専門家への相談を強く推奨します。

私が実際に行ったEB-5シミュレーションの過程

海外不動産保有者として「維持費」の現実を知っていたから気づけた盲点

私はハワイに実物不動産を保有しています。ハワイの不動産オーナーとして実感しているのは、取得後の維持コストが想定を上回りやすいという現実です。固定資産税(プロパティタックス)、管理費、修繕積立、保険料——これらを積み上げると、物件価格の1〜2%程度が年間ランニングコストとして出ていきます。

この経験があったからこそ、EB-5のシミュレーションを組む時に「ビザ取得後の年間維持コスト」を最初に洗い出すことができました。実際に試算してみると、永住権取得後に米国で生活する場合の年間基本コストは以下のようになります。

  • 健康保険(民間保険。雇用主負担なしの場合):家族3人で年間約2万〜3万ドル
  • 米国での住居費(賃貸、都市部):年間約2.4万〜6万ドル(エリア差が大きい)
  • グリーンカード維持(コンディショナル解除申請等の弁護士費用):初期2〜4万ドル規模
  • 会計・税務申告費用(米国CPA費用):年間1万〜2万ドル程度

このうち会計・税務申告費用については後述しますが、米国市民権・永住権保有者には全世界所得申告義務が生じるため、日本にいる場合より申告の複雑度が上がります。税務判断については必ず日米両国の税理士・CPAに確認してください。

ビザ申請費用と弁護士費用の現実ライン

EB-5ビザの申請プロセスは、I-526E申請(投資家請願)→領事面接→I-485調整(国内調整の場合)→I-829申請(コンディショナル解除)という流れをたどります。各フェーズで移民弁護士費用が発生します。

私が複数の移民弁護士事務所の資料を参照して把握した相場感では、I-526EからI-829までのトータル弁護士費用は3万〜5万ドルが一般的なレンジです。安価な案件では1.5万ドル台もありますが、EB-5のような高額投資案件で費用だけを基準に弁護士を選ぶのは避けるべきです。

政府手数料(USCIS filing fee)も2022年改正以降に改定が続いています。2024年時点でI-526Eの申請手数料は約1,1,675ドルとなっており、I-829は約3,750ドルです。これらは定期的に改定されるため、申請時点での最新料金を必ずUSCIS公式サイトで確認してください。

税務影響の6項目検証|FP視点で見た日米二重課税リスク

日本居住者としての課税関係と出国税の試算

EB-5で米国永住権を取得して実際に渡米・定住する場合、日本側では「出国税(国外転出時課税)」が問題になります。所得税法第60条の2に基づくこの制度は、有価証券等の含み益が1億円以上ある場合に、出国時点で課税対象となる可能性があります。

私はフィリピンとハワイに不動産を保有しているため、この点を自分ごととして試算しました。不動産は出国税の対象外(有価証券・未決済デリバティブが対象)ですが、株式・投資信託等の金融資産に含み益がある場合は注意が必要です。

35歳でEB-5移住を検討する方が典型的に保有していそうな金融資産(例:NISA口座・個人型確定拠出年金・株式ポートフォリオ)の含み益次第では、出国前に税理士と連携して資産の整理・移転計画を立てることが重要になります。具体的な税務判断は税理士への相談を推奨します。個別ケースで課税額は大きく変わります。

米国での全世界所得申告と日米租税条約の活用可能性

米国グリーンカード保有者は、居住地に関わらず全世界所得をIRS(米国内国歳入庁)に申告する義務があります。日本でも所得がある場合、日米租税条約の規定に基づく二重課税排除(外国税額控除等)を適切に適用することが必要です。

この申告作業は複雑度が高く、日本の税理士と米国のCPA両方の連携が現実的です。私が知る富裕層・法人オーナーの事例では、日米クロスボーダーの税務顧問費用として年間100万〜300万円規模を想定している方が複数います。もちろん資産規模・所得構造によって費用は大きく変わります。

私自身は2026年に法人を設立した際、税理士との顧問契約を締結するプロセスを経験しました。その時に痛感したのは、「顧問料の安さ」ではなく「自分の資産・事業構造を理解してくれるかどうか」が専門家選びの核心だということです。EB-5のような複雑な案件ほど、この原則は強く当てはまります。カナダ移住とは実体験|35歳目標で調べた7つの基本要点

為替リスクの影響額と私が見た失敗事例3つ

10年間の為替変動が収支に与えるインパクト試算

EB-5投資は基本的に米ドル建てです。日本在住者にとって、円ドル為替の変動は収支に直接影響します。私はハワイ不動産の購入時に為替リスクを身をもって経験しているため、この点の試算を丁寧に行いました。

80万ドルの投資元本を1ドル=150円で換算すると1億2,000万円です。これが返還される時点(プロジェクト完了後、一般的に5〜7年後が目安)の為替レートが、収支を大きく左右します。

  • 1ドル=130円で返還された場合:1億400万円(約1,600万円の為替損失)
  • 1ドル=150円で返還された場合:1億2,000万円(為替損益ゼロ)
  • 1ドル=170円で返還された場合:1億3,600万円(約1,600万円の為替利益)

円高方向への振れは特に注意が必要です。元本返還があっても、為替差損で実質的な損失が生じる可能性があります。円建てでコストを考える際には、必ず為替感応度を複数シナリオで試算してください。

私が現場で見聞きした失敗パターン3つ

海外金融機関での営業経験と、現在の法人経営・不動産保有の過程で、EB-5を含む投資移民案件の失敗パターンを複数件把握しています。以下は私が実際に見聞きした事例を、個人が特定されない形で整理したものです。

失敗パターン①:プロジェクト選定を「担当者任せ」にした
リージョナルセンターの選定において、紹介された1案件のみを検討し、他のプロジェクトとの比較を行わなかったケース。プロジェクトが完工遅延し、I-526Eの承認からI-829申請まで予定より3年以上延びた事例があります。雇用創出10名の要件達成が確認できるまでの期間が長引き、その間の生活計画が大きく狂いました。

失敗パターン②:出国前の税務整理を後回しにした
日本に株式・投資信託の含み益が1億円超あったにもかかわらず、出国税の存在を把握しないまま渡米手続きを進めたケース。出国直前に税理士から指摘を受け、対応策を検討する時間的余裕がなかったと聞いています。税務的な事前準備の重要性を、私は繰り返し強調したいと思います。

失敗パターン③:英語力・現地ネットワーク不足で孤立
永住権取得後、実際に米国生活を開始してから現地のCPA・弁護士・不動産仲介業者との接点がなく、事務手続きを自己処理しようとして誤申告が発生したケース。適正処理であれば問題になりませんが、書類の記載ミスが税務調査の論点になることもあります。現地の信頼できる専門家ネットワークは渡航前に構築しておくべきです。カナダ移住比較実体験|35歳目標で調べた7つの判断軸と費用差

EB-5シミュレーション総収支まとめ|試算の結論と次のアクション

6項目の収支試算:35歳移住の総コストサマリー

ここまでの試算を6項目で整理します。金額はすべて私が設定した試算前提(1ドル=150円、TEA案件80万ドル、家族3人での渡米)に基づく概算です。個別の事情により実際のコストは大きく異なります。

  • ①投資元本:80万ドル(約1億2,000万円)
  • ②管理手数料:約5万ドル(約750万円)
  • ③弁護士費用・申請手数料(総計):約4万〜5万ドル(約600〜750万円)
  • ④米国生活の年間維持費(健康保険・住居・税務申告等):年間約6万〜10万ドル(約900〜1,500万円)
  • ⑤為替リスク(シナリオ別差異):±1,600万円規模(1ドル±20円ケース)
  • ⑥日本側の税務コスト(出国税・移転コスト):個別ケースで数百万〜数千万円の幅あり

①②③を合計した「ビザ取得までの初期コスト」は概算で89万〜90万ドル(約1億3,350万〜1億3,500万円)です。④の年間維持費は10年間で6,000万〜1億5,000万円規模になり得ます。

この数字を見て「高すぎる」と感じるか「米国永住権の価値に見合う」と感じるかは、渡航目的・資産規模・家族構成・キャリアプランによって完全に異なります。私がシミュレーションを通じて感じたのは、EB-5は「アメリカで生きる覚悟と資金力が揃った人のための制度」だということです。

アメリカ永住権取得に向けた今日からの具体的ステップ

EB-5シミュレーションをここまで読んでくださった方は、本気で投資移民・アメリカ永住権を検討している方だと思います。次のアクションとして、私が推奨するステップを以下に示します。

  • ステップ1:移民弁護士との初回相談(費用0〜有料、資格確認を必ず行う)
  • ステップ2:日本の税理士にEB-5移住前の資産整理・出国税シミュレーションを依頼する
  • ステップ3:SEC登録済みのリージョナルセンター案件を複数比較する
  • ステップ4:海外移住コスト全体の家計シミュレーションをFP・専門家と作成する
  • ステップ5:現地滞在経験(視察・長期滞在)を通じて生活環境を体感する

私自身、フィリピン・ハワイの不動産保有を通じて「書類上の計画」と「現地の現実」がいかに乖離するかを経験しています。海外移住コストは試算より現実の方が上振れするケースが多い——これが私の率直な感想です。

EB-5の詳しい投資移民プログラムの要件・最新情報・専門家紹介については、以下のリンクから確認できます。シミュレーションの次のステップとして、ぜひ活用してください。

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筆者:Christopher(クリストファー)/AFP(日本FP協会認定)・宅地建物取引士。2026年に都内で法人を設立し、税理士選び・顧問契約・決算期の打ち合わせまでの実務を自ら経験。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、個人事業主・富裕層・経営者の保険×税務相談を多数担当。フィリピン・ハワイに実物不動産を保有し、海外金融機関での営業・口座開設・現地不動産購入の実体験を持つ。現在は都内法人経営・インバウンド民泊事業を運営しながら、海外資産管理・移住検討のリアルを発信中。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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